日誌書きたい


もうこの話しかないわけですが
今日も新入りさんがスパークスパーク
あんまり聞いていないので
内容までは覚えていませんが
ただこの病院は暇だねって
それはあなたにできることが少ないからでしょうに
他の技師さんは全然暇そうにしてないもの
まぁ最近は検体が少ないから
いつもと比べれば
のんびりしているのかもしれないけれど
少なくとも私には暇がないわけで
邪魔しないでいただきたい


今日も解剖があって
新入りさんとふたりきりになり
私は日誌を書いていたのですが
技師さんが標本を見せろって
契約の時間過ぎたんだから帰ればいいのに
どうせ誰が訪ねて来たって
私非常勤なもんでって追い返すか
他の技師さんを呼ぶしかできないんだから
それだったら私にだってできるし
むしろ私の方が知っていること多いし


臨床の先生が
剖検室と連絡をとりたいとやって来たのですが
分からないから剖検室まで行けって
電話あるのに
まぁこれは人の話に割って入れない
私の弱さのせいでもありますが


あとで技師さんに
一応電話はあるって言ったら


でもほら古い病院だから
どうするの?
ガーゼかなんかで包んで受話器とるの?
いいとこだとさ
通話ボタンが床にあって
足で踏んで話ができるんだけど


ですって


大丈夫ですよ
たいてい立ち合いの先生がいて
記録を書いたりしていて
その先生は手もきれいだから
私もとったことあるし
嗚呼穴があったら入りたい
掘ってでも入りたい思い出




しかし標本は見ないでほしい
途中キシレンに水が入っていたせいで
色むらだらけのとかもあるし
いろいろ言われても
今さらどうしようもないから
んで
何も言わないのは
まぁいいんだけれど
その表情いけすかない
何か言いたげな
意味ありげな顔
老眼鏡をかけている人の癖なのか
やたら上目づかいなのもいやだ
眼鏡をかけていないときまで
上目づかいになっていて
どんなブリッ子かいって



そしてまた例によって
ここって疾患(の顕微鏡写真)が載ってる本とか
ないよねって言うから
これに載っていると
手元にあった本を渡したら
それを見ながらいちいちコメントをつけはじめた


あのー私日誌書きたいんですけど


今日は印鑑もらわなきゃいけないから
全部書いておかないといけないんですけど
喋り続ける技師さん


それが途切れて
私は分からないことを調べに席を立って
本をめくって調べていたのですが
〇〇ってなんだっけ?って
私が見ていた本で調べてって感じで
載っていると分かったら
その本を取って音読し始めた


あのー私日誌書きたいんですけど



本当に自分中心というか
中心もなにも自分しかいないんだろうなって
そんな気がした



それからひとり技師さんが帰って来て
来週のテストをプリントアウトしていて
私はなんとなくそれを見ていたんですが
もちろん見えるわけありません
それなりに
2メートルくらい離れたところから
パソコンの画面の字を読むなんて不可能です
視力もたいしてないし
なのに新入りさんてば
すっと私とパソコンの間に入ってきて
パソコンの画面を隠した
その無意味さが分かっている私には
なんだかね
本当にもう
いいや



今日で私の病理の実習が終わりだと思っているらしい彼は
シメっぽいことを語り出した
朝に来週も何日かはいるって言ったんだけど
でも私は日誌を書きたくて


いつの間にか質問が輸血のことになっていて
でも私は日誌を書きたい
頭にはそれしかなくて
しかも何を答えても
それじゃ足りないと納得してくれない
Uさんタイプだな


質問はさらに飛んでくる


Q.オモテ検査とウラ検査の違いは?


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Q.血清と血漿の違いは?


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それはもう
テレビを観ながら本を読むような
小説を読みながら詩を暗唱するような
そんな感じで
考えがまとまらない
自慢じゃないが
一度にふたつのことはできんのです



どうせどう答えても難癖つけられるし
早く話を終わらせたい私の出した答えは


黙秘


何を聞かれても
答えが分かっても
ただ曖昧に笑って首を傾げ続けた
別にアホだと思われても構わない
すきなだけバカにすればいいさ
今の私は


日誌を書きたい


それだけだ
ちゃんとやっておいた方がいいよと
苦言をいただいて
なんとか帰っていただいた
やっと日誌が書ける


こうやって書いてみると
私もけっこうおこがましいな
まぁいいや



印鑑をもらうために待っていたのですが
技師さんはいつまでたっても帰ってこなくて
6時くらいになって
他の技師さんに帰れと言われて帰ったのですが
来週から夏休みの技師さんに
来週で実習終わりなのに
挨拶するのを忘れてしまった
やってしまった



今日は先輩とお食事の約束があったので
急いで向かわねばなりません
引き返している暇はなく
途中参加って大きらい
友達だけなら確実に帰るもの
帰りたい


ちょっと迷ってやっと着いて
エレベーターは苦手なので
階段を見つけて上ったのですが
どうやら非常階段だったらしく
お店には入れなかった
しかしここ非常階段なのに物がいっぱいで
人ひとり通るのも大変じゃないか


また階段を下りて
諦めてエレベーターに乗りました
なんて言えばいいのかな
待ち合わせ?
誰と?
先輩の名前言えばいいのかな?
でも予約しているわけじゃないから関係ないよね
結局
待ち合わせで女4人の・・・と言ったら
店員さんもつられたのか“女4人”って言った
できれば“女性”の方がよろしいです


メニューはしゃぶしゃぶで
やっぱりお肉がおいしい
最後に1杯お酒を頼んだのですが
全然おいしいと思えませんでした
どうしたんだろう
勿体ないから全部飲んだけれど
かなり無理矢理だった
もうあの頃とは違うのかしら





そんな1週間でした
病院に行くのもあと5日
淋しいな
淋しいな
こんな風に思っているの
きっと私だけだろうな
レポート書かなきゃ
勉強もしなきゃ